• だしと私 2019.09.03

vol.12 ごはん同盟 シライジュンイチさん、しらいのりこさん

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ごはんをテーマに活動しているごはん同盟は、シライジュンイチさんとしらいのりこさんの夫婦からなるフードユニット。お米選びから炊き方、混ぜごはんや炊き込みごはんといったお米を使うレシピ開発、ごはんに合うおかずのレシピ提案まで、その活動内容は多岐に渡ります。炊きたてのごはんとだしの相性は言わずもがな。これまでの活動や、だしについての考えなど、二人にお話をうかがいました。

ごはん食べ放題のイベントから生まれた

フードユニット「ごはん同盟」

ごはん同盟が誕生したきっかけは、ジュンイチさんのご実家が米農家だったことだとか。

「そうなんです。実家で作っている米をもっとたくさんの人に食べてもらいたいなと思って、直接販売を考えたんです。それで実家の米を小さなパックに詰めて商品化して、マルシェなどに出店して販売を始めました」

今でこそ、ファーマーズマーケットやマルシェといったイベントでの米販売は人気ですが、当時はまだ珍しかったよう。

「お米を販売していても、重いから外出先で買う人は少ないのか、爆発的には売れなくて(笑)。やっぱり食べてみないと、このおいしさは伝わらないから、お米を炊いて食べるイベントをしようと思いつきました。ちょうど私が料理の仕事をしていたこともあって、すぐに実現できたんです」

知り合いのキッチン付きのイベントスペースを借りて、ごはんを食べ放題のイベントを開催しました。

「ごはんのお供をずらーっと並べて、30人くらい集まったかな。そんなイベントを8回ほどやりました。"ガス釜最強伝説"とか"夏飯の陣"とか"おかわり三国志"とかいうタイトルをつけて。コンセプトや告知の文章を考えるのは、ライターでもあるジュンイチの担当です」

そのイベントに来た人たちから口コミで広まり、「ごはんをテーマに活動している人たちがいる」と話題になったことが、現在の活動につながります。

「ごはんを炊く人がいなくて困っているフードイベントに、炊飯協力という形で参加したこともありましたね。フードイベントが今ほどたくさんはなかったので、面白がってもらえたのかも。そうしたら、友人のコピーライターが『炊飯系フードユニット』というキャッチコピーをつけてくれました」

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知れば知るほど

ごはんの奥深さにハマる

当時はまだ2人とも別の仕事をしながら、二足のわらじ的な形でイベントを開催していましたが、徐々にごはんにまつわる仕事が増えてきます。

今ではごはんに合うおかずのレシピを求められることも多く、雑誌や広告でレシピを提案したり、レシピをまとめた書籍を出版したりと大活躍! 

「ご飯の炊き方を教えてください」という依頼も多く、炊飯教室を定期的に開催しています。お米って、炊く道具や炊き方によって、味が大きく変わるんですよ。炊飯って奥が深いんです」

そんな2人が辿りついた、いちばんの炊き方は何でしょう?

「普段はアルミの羽釜を使うことも多いですが、家庭でもっと使いやすいものとなると、炊飯用の土鍋がおすすめ。火を止めるタイミングさえ間違えなければ、失敗知らず。誰でも安定しておいしく炊けるかなと思います」

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日常生活に役立つ

簡単で手軽なレシピを

ごはんに合うおかずを考える際、どのようにだしを使っていますか?と聞いてみたところ、意外な答えが返ってきました。

「雑誌や書籍でレシピを提案するときは、いわゆる鰹や昆布でとるだしを使わないことが多いんです。というのも、だしを取るのは面倒で大変と思っている人が多いから。そして、なるべく手軽で簡単なレシピを求められているので、材料自体をできる限り少なくしたいと思っているためなんです」

とのこと。確かに、材料の表記がずらりと長いレシピを見ると、それだけで難しそうに見えてしまいがち。

「だから、だしが出やすいものを素材としてよく使います。しらすやちりめんじゃこ、ベーコン、桜えび、きのこなどですね。先日、出版したチャーハンのレシピ本『パラパラじゃなくていい! 最高のチャーハン50』は、このだしが出る食材をフルに使ってチャーハンのレシピを作りました。唯一、きのこあんかけチャーハンのあんにはだしを使いました。このあんかけで使ったのが、やきつべのだし。実はあんかけ好きで、焼きそばもよく作りますが、そのときも大活躍。とても重宝しています。」

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また、「だしがないと決まらない!」と思う料理が、いなり寿司。

「もともとお揚げを煮るのには、だしを入れない派だったんです。前述のようになるべく材料を減らしたいし、味付けが濃いいなり寿司は、だしがなくても成り立つと思っていたので。でもあるとき、東京のさまざまな名店のいなり寿司を食べて研究してみたら、あるお店の、油揚げにだしをしっかりと含ませたいなり寿司に出会い、おいしくて感動しました。そこで、そのお店で使われているという油揚げを取り寄せ、やきつべのだしで煮出して作ってみたら、深みのある味わいのいなり寿司ができました」

以来、いなり寿司を作るときは、やきつべのだしが欠かせなくなったそうです。

「ちなみにいなり寿司の酢飯に、さくさく鰹ふりかけを混ぜ込むと、歯ごたえがよくなって、いくらでも食べられますよ。鰹のふりかけってしっとりしてるかと思いきや、これはどこまでもサクサクなのがいいですよね」

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やきつべのだしがとりもつ

だしとごはんの素敵な関係

2人がだしを使うのは、主に旨味がたりないときだそう。

「だしを使うと味に深みが出て、複雑な味わいになります。例えば鰹だしにごま油を加えると中華風になるし、鶏ガラスープを混ぜてもいい」

やいづ善八の商品は、もともと友人の勧めで使ってみたのが最初。だしパックはいろいろなメーカーのものを使ってきたけれど、やきつべのだしを気に入ったのは、余計な塩分や調味料が入っていないところだそう。

「レシピを提案する際は、だしパックだと手軽。だけど調味料や塩分が入ったものだと、そのメーカーのだしパックを使わないと味の再現ができなくなります。やきつべのだしは、原料が鰹節のみなのがいい。自分で昆布や煮干しを足して混合だしにしたりとアレンジしやすく、だしをとることに対するハードルがぐっと下がります」

この取材当日のお昼ごはんにも、やきつべのだしを使ったと言います。

「きのこと湯葉のあんかけ丼を作りました。みりんとしょうゆとやきつべのだしだけ。野菜を食べたいなと思うときは、鰹だしを使うことが多いですね」

ほかにも、やきつべのだしに出会ってから、よく作るようになった料理があるとか。

「茶碗蒸しをよく作るようになりました。今まではだしを用意するのが面倒だったのだけれど、だしパックを使うようになったら食卓に上がる回数が増えたんです」

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普段の食卓には、鍋や麺類の出番も多いそう。そんなときに大活躍してくれるのが、深い鰹白だし。

「薄めてすぐに使えるところが気に入っています。鰹節のほかに、鯖節、むろ節、いわし煮干からひいただしも使っているので、味わいが複雑になり、料理にぐっと深みがでますね」

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「この夏、香る鰹だし醤油に青唐辛子を漬けこんだらおいしそうだなと思ってやってみたら、大正解! 焼き魚に添えたり、余ったお刺身と一緒に漬けにしたり。それを酢飯に混ぜれば簡単に手こね寿司が作れます」

すぐにでもやってみたいアイデアが続々!

「さらににんにくも加えたら、焼いた肉や魚にかけるのにちょうどいい、絶品の薬味醤油になりますね。パスタや焼きそば、ビーフンなどの麺類に使ってもおいしいですよ」

食卓を豊かにする

日本全国の郷土食

そんな2人がこれから力を入れていきたい仕事は、地方での料理教室だそう。

「全国各地で料理教室を行う機会も増えてきました。地元の方々と料理するのが、すごく楽しくて。その地方ならではの郷土料理に出会うことがよくあります。でも、最近お祭りや行事で食べられる地域特有の料理は減ってきているそうです。そんな知らなかった料理を教えてもらうと、これは後世に受け継いでいかなきゃなと。協力していただくおばあちゃんたちはすごく元気で、60代ならまだ若手のほう。料理も後片付けもとても仕事が早いんですよ。見習わなきゃ(笑)」

日本全国の食材をもっと勉強したいし、2人の出身地である新潟の食も盛り上げていきたいと語ってくれました。

取材・文/藤井志織

プロフィール

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ごはん好きの、ごはん好きによる、ごはん好きのための炊飯系フードユニット「ごはん同盟」。メンバーは、調理担当する試作係のしらいのりこさんと、企画や執筆を担当する試食係のシライジュンイチさんの2人。「おいしくお米をいただくこと」を常に研究し、レシピ開発、ワークショップや料理教室、イベント、雑誌やテレビといったメディアなどで活躍中。近著に「パラパラじゃなくていい!最高のチャーハン50」(家の光協会刊)http://gohandoumei.com/