YAIZU ZEMPACHI LETTER
食品会社の商品企画を経て、カフェのようなレストランのような店「ライクライクキッチン」で働きながらイタリア語を学び、本場イタリアに赴いて料理修行をしてきた夏目陽子さん。自宅で料理教室を主宰する傍ら、現在は料理研究家、小堀紀代美さんのアシスタントをしながら1歳半の息子の育児に奮闘中。そんな夏目さんにお話を伺いつつ、やいづ善八の商品を使った簡単レシピも教えていただきました。
夏目さんの料理道のスタートは、新卒で入社した食品会社。そこで企画開発の仕事をしていたそう。
「社長がこだわりの強い面白い方で、料理人や料理研究家の方々が出入りするような会社だったんです。その様子を見ていたら、商品開発よりも実際に料理を作って魅せる仕事が面白そうだなと思うようになりました。それで退社して料理家さんのレッスンに通ったりしていたとき、同じ教室の先輩でもある小堀紀代美さんに知り合ったんです」
料理家の小堀紀代美さん(「だしと私」のvol.27にご登場)が当時経営していた「likelikekitchen」というお店に遊びに行き、「うちで働かない?」とスカウトされたのだとか。
「紀代美さんと一緒に働くのはすごく楽しかった。自分にできる料理の仕事はなんだろう、と考えるようになり、専門分野をもつためにより深く学びたくなりました。お菓子や和食を専門にする友人はいたけれどイタリア料理を専門にしている知人はいなかったし、もともとヨーロッパの田舎を感じるような料理が大好きだったので、イタリア料理を学ぼうと決めたんです。まずは働きながらイタリア語を覚えて、お店を3ヶ月ほど休んでイタリアへ留学しました」
眠る間も惜しんで学ぶ日々。「若かったからできたかも」と笑います。帰国後はまた「likelikekitchen」に戻って働いていましたが、大家さんの都合によって閉店することに。
「以前から『将来、料理教室をやりたい』という話をしていたこともあり、紀代美さんに『まずは2人でやってみない?』って誘われて。それで私が生パスタを担当し、紀代美さんがお菓子を教える、というふうな組み合わせで教室をスタートしました」
その後、生パスタとイタリア料理、たまにおうちごはんを紹介する料理教室、「mano a mano」を自宅にてスタート。
「今年で8年目になりました。生パスタとイタリア料理が基本で、1年に6コースくらいのメニューを紹介しています。イタリア料理だけでなく、たまにおうちごはんというときもあります」
このおうちごはんレッスンはなかなかの人気があり、同じメニューを2回、3回とリピートする生徒さんもいるのだとか。
「餃子とか焼売みたいな中華メニューが多いんですが、ちょっとマニアックなんです。例えば焼売なら、市販のひき肉を使わず、部位を独自に配合した肉をたたいて作ります。もちろん、時間がないときはひき肉を使ってもいいけれど、その差を知ると面白いですよ、誰かに出したら驚いて喜ばれますよ、と伝えています。おうちで手軽に作れるもの、というよりは手がこんだものですね」
肉を自分で叩いたからこそのおいしさ、配合による味の違い。そこを突き詰めておいしさを追求する、研究家気質の夏目さん。
「もともと、いわゆるコンソメとかブイヨンなどを使わずに、いかにおいしくするかっていうことを大切にしてきました。トマトの煮詰め方とかで深い味を出すとか。紀代美さんともよくそんな話をしていましたね」
だからだしも丁寧にとるのが当たり前で、市販のだしパックもほぼ使ったことがないのだとか。
「たまに使ってみたくて買ってみては、味に納得できなくて、使いきれない。でも1年ほど前に出産したら、やっぱりなんだかんだバタバタな日常で。簡易だしを使ったら気持ちがラクだなと思うようになりました」
そんなとき、小堀さんがだしプレッソを使ってだし巻き卵を作っている場面に遭遇。
「『紀代美さん、それなんですか!?』って即座に聞きました。説明を聞いたら塩も入っていない、無添加なものだと知って。おいしそうだし、日々の料理がラクになるなら使ってみたいなと思い、いくつかいただいて帰ったんです」
最初は炊き込みごはんを作ろうと思ったそうですが、レシピブックを見たら冷水希三子さんの「だしパエリア」が目に入り、やきつべのだしを使ってさっそくチャレンジ。
「カレー粉を少ーし加えてアレンジして作ってみました。すごくおいしかった!」
その後、いろいろな料理をやいづ善八の商品で作ってみることにした研究家気質な夏目さん。
「いつもは昆布出しで作っている鶏鍋を、鰹のだしパックで作ってみました。みりんや塩、薄口醤油を加えて、うどんすきみたいな感じにして。肉団子にも味がついてるから、食べながらすだちや柚子胡椒とかで味変するんです。ちょっと残ったら翌朝、焼いたお餅を加えて、お雑煮っぽくして食べます」
また、月に1度は作るというお好み焼きには、だしプレッソ昆布を使用。
「料理教室のおまけレシピで紹介している私の定番メニューなんですが、長芋と、刻んだたこを大量に入れるのがポイントです。粉を混ぜる水分は、だしプレッソだけ。豚バラ肉を広げた上に生地を流して焼くと、旨みが濃くておいしかった!」
残暑が厳しい最近、よく作るのはオクラとトマトのスープ。深み鰹白だし大さじ1と1/2、みりん小さじ1、水300ml、オクラ5本、トマト(小)1個、しょうがのすりおろし少々、ごま油少々を鍋に入れてひと煮立ちするだけ。
「これまで白だしも使ったことがなかったのですが、トマトの酸味が効いて、和風すぎない味になるところが気に入っています。あと1品っていうとき、3分ほどで作れる簡単スープ」
また、揚げ茄子と豚しゃぶも大好評の一品。
「なすを縦半分に切って、皮目に細かく1〜2cmの切り込みを入れて、すぐに米油でさっと素揚げ。しゃぶしゃぶ用の豚肉はさっとゆでてザルに上げておきます。パクチーダレ(深み鰹白だし大さじ1、水大さじ2、きび砂糖小さじ1、米酢小さじ1、柚子胡椒小さじ1/4を混ぜる)をかけていただきます。揚げ浸しよりも簡単ですぐにできるのがいいところ。電子レンジで蒸しなすにしてもいいけれど、その場合はパクチーダレに油分を足すといいかも」
そして最後にご紹介するのが、香る鰹だし醤油を使った、鶏と揚げ野菜の甘辛ダレ。
「鶏もも肉1枚は余分な脂などをとってからひと口大に切り、塩、香る鰹だし醤油、しょうがのすりおろしを揉み込んでおきます。パプリカやなす、ししとうを素揚げし、鶏肉は片栗粉をまぶして揚げて。油をきって、熱いうちに甘辛ダレ(香る鰹だし醤油大さじ1と1/2、水を大さじ1、米酢小さじ1と1/2、きび砂糖小さじ3/4を混ぜる)をからめるだけ。男性にも喜ばれること請け合いですよ」
取材・文/藤井志織
生パスタとイタリア料理、おうちごはんのお教室「マーノアマーノ」主宰。食品系の企画開発の仕事を経て、カフェレストラン「likelikekitchen」に勤務。働きながら調理学校卒業後にイタリアへ留学し、現地の料理学校で学ぶ。帰国後、フードコーディネーターとして独立。http://mamamano.exblog.jp