YAIZU ZEMPACHI LETTER
昨年から「やいづ善八」の商品を販売していただいている生活雑貨のお店「hal」。経営しているのは、ご主人と22歳の息子、20歳の娘と暮らすお母さんでもある後藤由紀子さん。その生活ぶりは多くの人の注目の的であり、雑誌で取材されることも多く、著書も大人気。そんな後藤さんに、だしとの付き合い方について、お話を伺いました。
長年、子どもたちのお弁当作りから夜ごはんまで、家族の食事作りに追われてきたという後藤さん。子どもたちが成人した今は、料理や食事のスタイルが変わって落ち着いてきたものの、仕事もあるため毎日は相変わらず大忙し。
「和食が多いこともあってだしは毎日使うけれど、きちんとだしをとる丁寧さを私は持ち合わせていないから
だしパックは必需品。ただ、どこのものを買うかは決まっていなかったので、そのとき目についたものや安売りしているものを買っていました。"だしパックジプシー"です(笑)。すると、それぞれの塩分とか濃度について把握していないので、料理の味がバラついてしまうんです。いつも使うメーカーが決まっていれば味が安定するのになぁと、よく思っていました」
そんなとき、仲のよい友人たちから勧められて興味を持ったのが「やいづ善八」。早速、会社と連絡をとってみたところ、それまでの歴史や多くのメーカーのだしをOEMで作ってきたという話を聞いて、その確かな技術が信頼できると感じたそう。
「焼津は同じ静岡県だし、地元のものを応援したいという気持ちもあって。これでようやく毎日の料理の味が安定するな、うれしいなぁと思いました。同じ悩みを持っていた主婦の人、多いと思うんです。だからお客さんにも薦めやすい」
後藤さんも実際に、朝晩の料理に使っています。
「私が作るのはおしゃれさなんて皆無の、実家で食べるような茶色いごはん。使う調味料も、だし、醤油、味噌がほとんどです。医食同源だと考えているので、タンパク質は多めに、とかカルシウムもちゃんと入るようにとか、野菜は多めにとか。オーガニックとかよりも、身近な野菜をなるべくいろいろ使うことに気をつけています。栄養士になりたかったくらい、そういうことを考えるのが好きなんですよ」
後藤さんにとって料理は、家族のために毎日作るもの。
「主人は白いごはんに合うものが大好き。だから私も、目新しいおしゃれなものは外で食べるもの、家では子どもの頃から食べ慣れているようなおかずを作るようにしています。誰かが元気ないなと思ったら、好物を作ってあげたり。娘が、豚しゃぶ用の肉と白菜を煮たのが大好きなんですけど、「やきつべのだし」とか「香る鰹だし醤油」を使ってよく作ります。白菜を2玉くらいいただいても、これだとあっという間になくなるくらいおいしい」
過去に無理をして倒れてしまった経験から、最近は家族がそれぞれに料理をしてくれることも増えてきたといいます。
「夫も今は魚くらいは焼けるし、とにかくおいしいだしさえあれば、なんとかなると思っているんです。もし私が具合悪くて寝ていても、お味噌汁くらいは作れるだろうし」
後藤家では、お味噌汁はほぼ毎日、食卓に登場するとか。
「朝に飲むと塩分の吸収が抑えられるってなにかで聞いて以来、なるべく毎朝、飲むようにしています。具材は冷蔵庫にあるもので。前の晩に根菜を煮ておいて、朝に味噌を溶き入れるとかね。特に寒い時期は、朝にあったかいお味噌汁があるとほっとしますよね」
後藤さんは料理本を見るのが大好き。新しい本を買うと、ひととおり作ってみるのだそう。
「そうするとやっぱり、目新しいものよりは知っているような感じのおかずが家族には好評で。特に男性はそうですよね。重信初江さんや飯島奈美さん、たまに料理を習っているたくまたまえさんの料理が、わが家の定番です。この3人の料理は、なんだか共通して、おいしいにおいや体温を感じるんです。普通のお皿にのった普通の卵焼きの写真がおいしそうで、ちゃんと暮らしているんだろうな、と思う」
「やいづ善八」の公式サイトに掲載されているレシピも、もちろんチェック。
「私が作るのは煮物とか魚焼いたのばかりだから、冷水希三子さんのレシピは新鮮でした。だしでポタージュも作れるんだぁ、って。いろいろ作ってみましたよ、トマト肉じゃがもおいしかったなぁ。「深み鰹白だし」を使った紺野 真さんのレシピのクリームソースとかメキシカンスープにもびっくり! 私が「深み鰹白だし」で作るのは、だし巻き卵や煮物です」
「hal」で販売していて、お客さんの反応はいかがでしょう?
「「やきつべのだし」は、手土産や海外に行く人のお土産にもすごく喜ばれるみたいです。だしを取らない人も白いごはんは食べるから、「さくさく鰹ふりかけ」もよく売れますよ。お客さんから野菜に和えてもおいしいと聞いて、なるほどーって(笑)。レンジでチンしたほうれんそうと梅肉とふりかけを和えるのとか、いいですよね」
「hal」は器や本、モロッコとメキシコのかご、洋服や靴など、後藤さんセレクトした素敵なアイテムが並んでいる小さなお店です。
「流行には関係なく、自分の好きなものだけを並べています。家というより、むしろ自分の部屋みたい。最初は主に器から始めました。好きな器を使うと、焼いただけ、ゆでただけのようないつもの料理が、すごく上手に見栄えよくなるんです。料理するやる気にもつながる」
「hal」で取り扱っているのは、村木雄二さんの粉引や唐津、濱田正明さんの飯碗やどんぶり
小野哲平さんの大皿や取り皿、田谷直子さんの急須などなど、素晴らしい器ばかり。
「みんなベテランだけど、ずっと値上がりしてなくて手の届く価格だったり、美術品じゃなくて生活道具なんだからっていう姿勢だったり。いい意味で緊張感がなくて、わが家のおかずとしっくりなじんでくれるんです」
そんな「hal」のなかで、楽しげなのが食材をセレクトしたコーナー。
「入って右側においしいものコーナーがあるんです。「Campbell's Perfect Tea」や、「関口ベーカリー」のオリーブオイル、「アアルトコーヒー」のコーヒー豆、沼津のお茶屋さんの茶葉というラインナップ。そこに「やいづ善八」の商品も並んでいます。買っていただいた方にリーフレットやレシピカードをさし上げると、みんな喜んでくれますよ。さっそく作ってみます、って」
実は後藤さんは手土産上手でもあり、雑誌や書籍でさまざまな贈り物アイディアを披露しています。
「「やきつべのだし」は賞味期限が長くて、誰もが使うからもらって困らない。デザインも素敵だから、プチギフトに最適なんです。「hal」にはご近所の方だけでなく、遠方からもたくさんの方に来ていただくので、静岡土産としてもおすすめしています」
著作の執筆や、「hal」のポップアップショップの全国行脚などでも忙しい後藤さんに、今後の展望を聞いてみました。
「子どもが育って自分の時間が増えてきて、楽しいこの頃。仕事も遊びも、無理をせずにがんばろうと思っています。老後はどうしましょう。おせっかいな気質だから、フリーランスの家政婦になろうかな。聞き上手だからスナックもいいねと友達に勧められたりしてます(笑)。それよりも心配なのは、子どもたちが巣立ったら、毎日のごはんが少しになること。私、少量で作るのが難しいんです(笑)。「やきつべのだし」は少量でもだしがとれるからいいんですけれど、ね」
取材・文/藤井志織
1968年静岡県生まれ。沼津市にある雑貨店「 hal」(ハル http://hal2003.net )の店主。庭師の夫、長男、長女、猫のたまと暮らしている。そのライフスタイルが雑誌などでたびたび取り上げられている。近著に「おとな時間を重ねる 毎日が楽しくなる50のヒント」、「日本ワインと手仕事の旅」、「50歳からの暮らしの整え方」、「後藤さん、今日はどちらへ? 地元な暮らし」などがある。インスタグラムは @gotoyukikodesu