YAIZU ZEMPACHI LETTER
庭に樹齢80年という大きなつつじの木が鎮座している、古い趣のある一軒家。高齢の家主が「この家を去らなければいけないけれど、どうしてもこのつつじの木を残したい」と話しているのを聞き、この場所を守るためにカフェを開くことを決意したのが、「松庵文庫」のオーナーである岡崎友美さん。
この「松庵文庫」では今、やきつべのだしを使ったおいしい食事が提供されています。カフェにまつわるだしについてのお話を、岡崎さんにうかがいました。
ランチ時間は待合室まで大混雑の「松庵文庫」。多くの人が、"お米御膳"をオーダーしている様子です。
「6年前にオープンしたときは、もっと簡単な軽食を出していました。今の升重2段にこまごまとしたおかずを詰めて、ごはんとお味噌汁をつけた"お米御膳"になったのは3年くらい前からですね。お米農家の山崎さんや、さまざまな料理家さんとの出会いがあって、ごはんとごはんに合うおかずを提供するという形になりました。とにかくご飯に合うようにというコンセプトなので、上質ないりこのだしを使ったりもしています」
おかずには、料理教室や食事会といったイベントで関わった料理研究家の方々の影響も。
「スパイスを炒るところからこだわって作っている"カレープレート"には、冷水希三子さんのスリランカカレーのワークショップで学んだアチャールを季節ごとに作って添えています。"お米御膳"に入れているのは、植松良枝さんにお弁当教室で教わった具沢山の卵焼き、千草焼き。料理研究家の方々には本当に学ぶことが多くて。その足跡を、少しずつ反映させていただいています」
冷水希三子さんがレシピ提案をしていたり、植松良枝さんが「だしと私」のインタビューに登場していたりということで、なんとなくやいづ善八の存在は知っていたという岡崎さん。
「うちで展示会をしてくれた静岡「hal」の後藤由紀子さんもインスタグラムにあげていて、おいしそうだなと気になっていたんです。でもあまり見かけないし、どこで買えるのかなーと」
カフェの経営者として、2人の娘の母として、多忙ななかで簡易だしパックは必須アイテム。
「自宅では、いろいろなメーカーのものを使っていました。でも全部同じ味になっちゃうんですよね。そのだしを調味すると濃くなりすぎることも多くて、調整が効かないし飽きちゃう。だけど、忙しいときは便利だし手放せない。そんなときにやきつべのだしを知りました。もらって使ってみたら、余計な味がしなくて使いやすい。今は毎日、やきつべのだしでお味噌汁を作っています」
味が気に入った岡崎さんは、「松庵文庫」でも取り扱いを始め、メニューにも使うようになりました。
「やきつべのだしで、季節の野菜と油揚げを煮浸しにしたり、春巻きの具をやきつべのだしで味付けしたりしています。野菜は「warmerwarmer」という古来種を中心に有機野菜を扱っている八百屋さんから取り寄せているのですが、自然に寄り添う収穫なので、季節によって青菜が多いとか偏りがあるんです。毎週月曜日に届いてから、ちゃんと向き合えている気がします」
おいしい野菜とだしさえあればなんとかなる、という安心感があるのだそう。
「レシピカードの冷水希三子さんのレシピを見て、かつおだしで洋風メニューもできると知ったのも楽しくて。和のものは和じゃないとって、どこか固定概念があったんですよね」
今の季節の新メニューは、きのこと里芋のドリア。味の決め手はなんと、鰹だしなのだとか。
「冬は古来種のネギがたくさん届くので、それをマッシュルームや里芋、きのこなどとバターで炒めて、深み鰹白だしを使って炊いたご飯と、深み鰹白だしで調味したベシャメルソースと合わせ、チーズをかけて焼きます。昨年は、栗と里芋を使って白ワインで風味をつけていたんですが、ネギを使うなら白だしで和風にしてみようかなと。やってみたらおいしくて」
20代の若い男性スタッフは、白だしの存在を知らなかったのだとか。
「忙しいときに白だしがあると助かるよね、と話していても、スタッフは『へー』という感じで、ピンと来ていなかったみたいなんです。ところが、ドリアの試作中にマッシュルームと深み鰹白だしを入れて炊き込んだごはんを食べさせたら、『めちゃくちゃおいしい! これ、なにで味つけたんですか!?』って。こんなに手軽に炊き込みご飯とか、和風のピラフができるんだって納得したようで、その後、『すみません。白だし買っていいですか』って言ってきました(笑)」
"お米御膳"のおかずが品切れしたときも、深み鰹白だしで手早く出し巻き卵を作ったり、夏場は、とうもろこしのすりながしや枝豆のゼリー寄せなどに使っていたのだそう。
「さくさく鰹ふりかけを小皿にのせて添えたりもしています。サーブする際に、スタッフが丁寧に食材や調味料について説明しているので、みなさま、じっくり味わってくださいます。それでお会計のときに『さっき食べたやつね』と、ついでに買っていっていただくことが多いですね。お弁当を作る世代のお客さまも多いので、さくさく鰹ふりかけはよく売れます」
「松庵文庫」のレジの近くには、やきつべのだしや深み鰹白だし、さくさく鰹ふりかけなどが、お弁当箱や調理道具などと一緒に並んでいます。
「パッケージデザインもいいので、ちょっと人にあげたいからと買って行かれる方も多いですね。私もお世話になった方々に、プチギフトとして差し上げています。必ず使うものだし、お互い気軽で喜んでいただけますよ」
平日の営業時間が21時までとなり、夕方にワインを楽しむ人や、仕事帰りに夕飯を食べて行く人、本を読みながらコーヒーを飲む人なども増えている様子。
ぜひ実際に訪れて、「松庵文庫」のゆっくりとした時間の流れを感じてみて。
取材・文/藤井志織
夫と2人の娘との4人家族。「松庵文庫」の建物を、「町の財産であり、残していかなくてはいけない」という一心で、ブックカフェとしてオープン。メニュー開発からカフェ運営、イベント企画、物販コーナーのバイイングまでを、スタッフと協力して手がけている。
松庵文庫
住所:東京都杉並区松庵3-12-22
電話番号:03-5941-3662
営業時間:11:30~21:00(土・日曜は~18:00)
定休日:月・火曜日
インスタグラムは@shouanbunko