YAIZU ZEMPACHI LETTER
今回ご登場いただくのは、クリエイティブディレクターのチダ コウイチさんと自身が主宰するブランドのデザイナーである野口アヤさんというご夫婦。ご夫妻は長年ファッションの世界で働き、共にいくつものブランドを手がけてきました。多忙すぎる毎日を乗り切るのに必要だったのが、自然豊かな神奈川県秋谷で過ごす時間だったそう。そんなお二人の日々の暮らしと食卓について、お話をうかがいました。
撮影/チダ コウイチ
「今日のお料理も、秋谷で買ってきた野菜を使います」
と野口さんが台所に広げてくれたのは、生き生きとした美しい野菜たち。美しく紫がかった蕗の薹とみずみずしい蕪、香り高い柚子。
「秋谷には農家直売の野菜売り場がいくつかあるんです。そのなかでも特に好きな店があって、そこで季節の無農薬野菜をたくさん買っています。スーパーマーケットには行かないですね」
とチダさん。旬のものしか手に入らないけれど、それをどう食べようかと考えるのも楽しいと言います。
「とにかく素材がおいしいから、焼いただけ、茹でただけでも十分。いつもお味噌汁と玄米ご飯、焼き魚とか天ぷらなどのおかずをなにかひとつ。それくらいで大満足なんです」
平日は建築家、都心にある吉村順三氏が手がけたヴィンテージマンションに住みながら、週末は秋谷で過ごすという2拠点生活を送っていますが、もともとは秋谷をメインにしていたのだとか。
「でも都内での仕事が必要なことが多いので、やっぱり東京にも拠点が必要だとなり、今は2拠点で暮らしています。実は違う場所にも住んでみようかなって思ったことがあって。出張で全国を訪れるたびに住むことを想像してみたのだけど、やっぱり秋谷は特別だなと確認することになった。海も山もあって、住むのに最高の場所なんです」
そこで最近はまた、秋谷で過ごす時間を意識的に増やしているのだそう。
「近年の状況もあるのか、もともと仕事仲間だったり、都内で飲んでいた友人たちが、最近続々と引っ越してきて。都内で会うのとはまた違って、家族ぐるみでリラックスしながら会えるのも嬉しいんです」
以前は、月に1度はホームパーティーを開催していたというほど社交的なお二人。
「昔から人に家を呼ぶのが好きで、50人もの人が来たことも(笑)。最近はなかなか集まれないから寂しいけれど、持ち寄りパーティは負担がなくてすごく楽しいですよ」
この素敵なご自宅に気心の知れた仲間たちが集まって、それぞれの得意料理を持ち寄るのだとか。想像するだけで華やかな雰囲気です。
「でも普段はそんな凝った料理はしないんです。パスタにお味噌汁なんてこともある(笑)」
いつも料理を担当しているのは野口さん。チダさんはパスタ専門で、ホームパーティのときに活躍するのだとか。
「今日のメインは鯛めしです。最近はこのバーミキュラのライスポット(無水鍋)が使いやすくて、お料理が楽しい。いつもは玄米なんですが、今日は近くのお気に入りの魚屋さんで良い鯛があったので、白いご飯と炊き込むことにしました」
健康のために化学調味料はなるべく避けているそうで、愛用の調味料もこだわりのものばかり。
「いつもはきのこや昆布を乾燥させてパウダーにしたものを、だしとしてよく使っています。お味噌や塩麹なども自家製。鰹や昆布のおだしもよく使います。うちの年越しそばは鴨汁なんですが、今年は昆布とやきつべのだしを使いました。その汁をお正月のお雑煮にも使うの。すごくおいしかったですよ」
鯛めしのレシピは、バーミキュラのブランドブックを参照して。
「昆布の代わりにだしプレッソの昆布を入れて、といだお米と水、お醤油、料理酒が切れていたから彼が呑んでいた日本酒を加えて鯛をのせます」
ご飯が炊けるまでにお味噌汁を、と手早く調理する野口さん。まずは水を張った鍋にやきつべのだしを入れて。
「ほかのだしパックの商品と違って、すごく濃いおだしが出ますよね。ちょっとケチって2パックでもいいかな(笑)」
だしが出たら切った蕪を入れて煮て、煮えばなに自家製味噌を溶き入れて、刻んだ蕗の薹を加え、仕上げに刻んだ柚子の皮を散らします。
「ちょうどご飯も炊き上がりましたよ〜」
鍋の蓋を開けたら、うっとりするようないい香り! ひと口食べて二人の顔がほころびます。
「忙しくても、なるべく自炊を心がけています。素材を生かした食事をちゃんとしていれば、元気でいられるはず」
「いつも一緒にいるのが当たり前」と笑う仲良し夫妻の日常には、こんな幸せな食卓がありました。
取材・文/藤井志織
野口アヤ・チダコウイチ
ファッションデザイナー/ディレクターであり、現在は自身のブランド〈ayanoguchiaya〉として活動している野口アヤさんと、これまで30以上ものブランドを手がけてきたというクリエイティブディレクターであるチダ コウイチさん。二人で共に〈SISON GALLERy〉を主宰している。チダさんが手がけているカカオに関するプラットフォーム「APeCA」では、野口さんがコーディネートする「レッツ!喫茶部」という連載も。
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