YAIZU ZEMPACHI LETTER
重信初江さんといえば、手軽!簡単!おいしい!を叶えてくれる、再現性の高いレシピに定評がある料理研究家。昔ながらの家庭料理はもちろん、長年通っている韓国の料理など幅広いジャンルの料理をわかりやすく紹介してくれるため、マンネリ脱出したい人にも大人気です。今回はそんな重信さんに、料理が苦手な人でも簡単にできるだしレシピを教えていただきました。
生まれも育ちも東京という重信さん。お母さまが静岡出身なので、大人になるまで煮干しだしを知らなかったほど、鰹だし文化に慣れ親しんできたそうです。 「うどんやお吸いもの、上品に仕上げたい煮もののときなど、ちゃんとだしを味わいたいときは、丁寧にだしをひきます。でもだしパックも粉末だしも使いますよ。酢のものとか南蛮漬けを作るのに、ちょっとだけだしが必要なときにはとても便利ですから」 ただし、レシピ考案の際は調味料の数字を出さなくてはならないため、調味された簡易だしは避けているそう。 「仕事がら、なんでも手作りしていると思われがちですが、麺つゆなどの市販品も使います。つゆプレッソは使い勝手がすごくよくて気に入りました。開封後3日以内、という賞味期限はちょっとハードルが高いけれど、確かにこの豊かな香りが落ちてしまうのはもったいない。使いきれなかったら冷凍するのがいいですね」 重信さんが麺つゆをよく使うのは、特に昼食時だそう。 「仕事中はお昼ごはんに時間をかけたくないんです。なるべく一品で終わりたいから、具材をたくさん入れたお蕎麦とか素麺とか食べることが多いですね。麺がのびるのが嫌いなので、温かい汁に入ったお蕎麦より、麺は常に冷たいのが好み」
今回教えていただいた〈豚こまとミニトマトのつけそば〉は、ゆで時間が短い生そば麺をゆでて冷水で締め、熱々の汁につけながらいただくメニュー。 「素麺やカッペリーニを使ったり、豚こまの代わりにサバ缶やツナ缶を使ったりしてもOK。つゆの甘さをちょっと引き締めるために、唐辛子としょうが汁を加えました。お好みで七味やゆず胡椒を入れてもおいしいですよ。途中でトマトがつぶれて、甘じょっぱい麺つゆと混ざり合うのもいいんです。味変で豆乳を加えると、まろやかになってタンパク質が摂れるのでおすすめ」
2人分の作り方をご紹介します。
***フライパンに油を熱し、半分に切ってから1cm厚さの斜め切りにしたなす1本を入れ、しんなりするまで2分ほど中火で炒める。薄切りにした玉ねぎ1/4個を加えて1分炒め、端に寄せて豚こま切れ肉120gを加えて炒める。肉の色が変わったら調味料(つゆプレッソ1カップ+水2/3カップ)を注ぎ、煮立ったら弱火で1分煮る。3cm長さに切った小松菜50gとミニトマト8個を加え、ミニトマトの皮が弾けるくらいまで煮る。ゆでて冷水で締めたそばを器に盛り、野菜つゆをつけながらいただく。***
「どこにでもある、手頃な材料を使って、手早くおいしいものを作りたい。現代人は忙しいから、みんなそう願ってますよね。私に来る仕事の依頼も"早い、旨い、安い"を求めるものが多いし、私自身もそれがいちばんだと考えています」 重信さんのレシピは、使う素材は少なく、調味料は計りやすく、複雑な工程はなし。経験と試作を重ねて考え抜かれたレシピは、とにかく作りやすく、必ずおいしくできると評判です。 「文字数が少ない料理研究家って言われてます(笑)。韓国料理もフランス料理も大好きですが、体の調子が整うのはやっぱり和食。外食の機会も多いので、家ではなるべく簡単であっさりした和食を食べるようにしています。野菜と炭水化物が好きだけど、最近はタンパク質も増やしていきたいお年頃。肉や魚、豆腐を意識して使うようにしています」 撮影で野菜が半端な量で余ると、焼き浸しにするのも定番だとか。 「ごぼうの端っことか、かぼちゃのかけらとか、きのこがちょっぴりとか、仕事で使いきれなかった素材を、多めの油で揚げ焼きにしてから漬け汁に浸しておくんです。漬け汁は希釈したつゆプレッソとお酢だけ。黒酢に替えてもいいし、サケや肉を加えても」
***焼きびたし(作りやすい分量)の作り方はこちら。漬け汁(つゆプレッソ1カップ+酢・水各大さじ2+小口切りの唐辛子ひとつまみ+しょうが汁大さじ1/2)をバットなどに入れて混ぜておく。フライパンに油を入れて熱し、1cm厚さの斜め切りにしたごぼう80gと、7〜8mm厚さの半月切りにしたれんこん150g、同様に切ったかぼちゃ200g、乱切りにしたパプリカ1/2個、大きめにさいた舞茸1パックを並べ、上下を返しながら焼く。火が通ったら油を切り、熱いうちに漬け汁に入れる。そのまますぐ食べられるが、30分以上おくと味が染みてさらにおいしい。冷めたら冷蔵庫で3〜4日保存可能。*** 「ごぼうは太かったら、2分ほど下ゆでしておくといいですよ。大根(乱切りより、半月切りや輪切りのほうが焼きやすい)もおいしい。かぼちゃの甘みがよく合います」と重信さん。ぜひお試しを。
取材・文/藤井志織
プロフィール
重信初江
雑誌やテレビ、イベントなどで活躍する料理研究家。東京都生まれ。服部栄養専門学校調理師科を卒業後、調理師専門学校での助手、料理研究家のアシスタントを経て独立。家庭料理をはじめ、旅先で覚えた韓国料理やフランス料理など各国の料理まで手がける。新刊『今夜は、肉!』(主婦と生活社)ほか著書多数。